林 圭一のFLIP MY MESSAGE Vol.163

製品への愛。

   私が営むケイテックでは、数年前よりアメリカへの輸出を始めています。現地での販売を

   担当するのはマイクさん。今回ご紹介する私にとって大切な人です。

 

   数年前のある日、1通のメールが届きました。差出人はマイクさん。日く…、


   「ケイテック製品を愛用しているが、アメリカの製品にはない品質には感心しています。

    私見ではありますが、これはやりようによっては広くアメリカで支持されるものと確信

    しています。つきましては、私にアメリカでの販売をさせていただけないでしょうか。」


   とのこと。


   「何者なんだ?」


   と思いながらも、私は彼と会話を重ねていきました。この人本気なの?といぶかしく思い

   ながらも、やはり自分の製品を理解し褒めてもらえば悪い気はしないからです。

   しばらくこうした会話を続けるうちに、私は彼に任せてみよう、と思うようになりました。

   マイクさんは、もともと釣り具業界人ではありません。立派な正業(バドワイザービール

   工場のプロダクションマネージャー)を持たれ、趣味としてバストーナメントを愛する人

   です。

   通常、この手の「販売代理店契約」を個人の、しかもサイドビジネス的な人と交わすことは

   ありません。かなり異例な、ともすれば非常識と言えることなのかもしれません。

   きちんとした会社であるか?強い販売力を持っているか?広いエリアをカバーできるか?

   お金はちゃんと払ってくれるか?などを俎上に乗せることが普通で、要は商売上の損得を

   比較的ダイレクトに値踏んでいくものです、特に外国との取引では。


   「でも、そういった損得勘定だけってなんか“乾いた”感じで好きくないな一。」


   商売をする者として甘い!!と言われればひと言もありませんが、私はつい、そう考えて

   しまうタイプの人間です。そんな私が「マイクさんでやってみよう。」と決意したのは彼の

   次の言葉でした。

   いわゆるそういうタイプの人間であるところの私は、これをイイと考え、これを信じ、
   長い目で託してみることにしたのです。やはり、こういったややもすると少し遠回りの
   ような“ロマン”めいたものが仕事をする上で大きな力になる、と私は思います。
   別の言い方をすれば、このような感覚がなければ、自分の仕事を根っから好きになる
   ことはできないでしょう。
 
   このような経緯から、私はマイクさんとビジネスを始めました。最初の頃はほんの細々。
   しかし、半年、1年そして3年と時を経るごとに(細々なりに)規模は拡大していきました。
   そして、こうしたビジネスを通したやり取りの中で、お互いの信頼関係は強固になって
   いったのです。
 
   「今のビジネスから得た利益は、将来への投資(プロモーション活動)にまわす。」
     「この品質は、必ずや全米で受け入れられる。そうすることが私のゴールだ。」
      「儲けは、そうなった時、勝手についてくる。」

   細々なりに、でも着実にビジネスをこなしながら、彼はこう言い続けました。
   ともすると、単なる美辞麗句に聞こえるかもしれないこのような言葉も、「製品への愛」が
   彼をして言わしめるものなのでしょう。
   さて、このようなお付き合いの中、私も彼に言い続けてきたことがありました。それは…、
 
   「たとえ、ちょっとばかりビジネスが上手くいったからといって、正業を手放すことの
       ないように。」

   ということです。専業になったらもっと力を出せるに違いない…。マイクさんがそう思い
   ハメをはずされても困るな。私が原因でマイクー家が路頭に迷う、という相当ネガティブ
   なシナリオを恐れた私は、そう言い続けたのです。まあ、彼は彼でそこは賢明な御仁、
   決して無用なリスクを犯すことはありませんでした。
   太平洋を挟んで、こんな二人が倦まず弛まず励んでおりますと、その業績は次第に伸びて
   まいります。そして最近、ついに“マイク専業スイッチ”の入る瞬間が来たのです。

    「私、マイクは今年10月をもって、バドワイザーを早期退職いたします。」
    「以降、私のすべての努力は、ケイテックUSAビジネスに注がれるでありましょう。」
   「そうした日々を、私は心待ちにしています。倉庫及び事務所も新築いたします。」
     「私にとってこれはいわゆる“仕事”ではありません。心から楽しめる生き甲斐なのです。」
     「これを実現した暁には、あ一もしたい、こ一もしたい。」

   このようなマイクさんからの言葉に触れ、私はついに来たか、と思いました。しかし、
   自分でも不思議なほどリスクを恐れる気持ちは無くなっていました。それは、彼への信頼
   であり、そこまで言ってくれて本望じゃないか、という気持ちもあるからです。
 
   ズブの素人であるはずのマイクさんがここまで来ちゃった…。そしてその原動力は言う
   までもなく、「製品への愛」。
 
    「マイクさん、製品への愛だったらあたしゃ一アンタに負けないヨ。」
 
   私はそうつぶやき、マイクさんへの全面協力を誓ったのでした。

                   頑張れ!! マイクさん。


   次回は7月15日アップします。