林 圭一のFLIP MY MESSAGE Vol.262

仕事に対する姿勢について。

 皆さん、NHKプロフェッショナル 仕事の流儀」という番組をご存じでしょうか。

 この番組は、医療やスポーツ、料理等様々な分野で独創的な仕事をし評価されている色々な

 個人にスポットをあて、なぜそのような仕事ができるのか、なぜそこまで仕事をするのか、

 その人の考え方や人生観も含めて探っていく番組です。
           NHK総合「プロフェッショナル 仕事の流儀
           放送 毎週月曜日 午後10時~10時48分 

 主な視聴者ニーズとしては、自身の仕事に対する姿勢や進め方の修正や確認、あるいは
 仕事に行き詰まり悩みをかかえている人が啓発されたり、励まされたりといったところかと
 思います。まあ時として、番組自体が取り上げている個人を熱く語り、かっこ良くまとめようと
 するところがややこそばゆくもありますが、基本的にどんな分野であれ、夢中で仕事に打ち込む
 人を観ることは無駄ではなく、私はこの番組をちょくちょく観ています。
 
 さて、そのようななか最近の「プロフェッショナル」で放映された1回に私は強いインパクトを
 受けました。それは、「自分もこうありたいものだ。」というような深い共感と羨望の念と言って
 いいでしょう。
 登場したのは宮脇修一という人。(株)海洋堂というフィギュアや模型の世界では知らない人は
 いないと言ってもいい程メジャーな存在、海洋堂自体がブランドといった会社を率いる人です。
フィギュア作りの要は量産のもととなる原型を作る作業。担当する原型師達は精緻な造形技術を
 誇り、業界に名をとどろかせています。生物フィギュア、可動式フィギュア、美少女フィギュア。
 こういったそれぞれの分野のエキスパートを指揮し、次々にヒット商品を生み出してきたのが
 社長の宮脇氏だ、ということです。私もこういったマニア垂誕のこだわりの品にはいささか
 興味があり、数カ月前に渋谷のデパートで催された「海洋堂展」を見にいっていました。
 そこで目にした製品の数々は、確かに私のような“素人”をも圧倒し感動を与えるに十分なもの
 でした。「並み居るマニアを向こうにまわして、なおさすがと言わせるこだわりの深さ」そう
 番組で紹介されるのも当然と思える、そういった製品を生み出す原動力ともなる考え方に私は
 共感を覚えたのです。そこには私も含めた他者が批評する余地もない、仕事に対する純粋な姿勢が
 貫かれています。ここでは番組をご覧になっていない方々のために、番組中で氏が発した言葉を
 ご紹介しようと思います。
 
 *プラモデルを組み上げながらコーヒーで一服…、
  「いいですね一、模型とコーヒーって合いますねえ。」
 
  *職場でフィギュアのサンプルを愛でながら…、
   「これ見てるだけでゴハンが3杯食べられる、いいオカズなんですよこれは。見てるだけで
   あ一ちょっと、いいね一、これ、たまらんね一という、ちょっと幸せな気分になって心が
     豊かになりますね。」
 
  *“客が欲しがる物”ではなく“自分が欲しい物”を作るというポリシーについて…、
   「理屈とかそういったものを超えて、まずは自分の“こういったものが欲しい、こういう製品が
     欲しい”というのが僕らのそもそもの仕事の原点というか、よく僕らマーケティングしません
     というのは、人が欲しいものをウチが提供するんじゃなくて、僕らの方から“こんなおもろい
     ものあるぞ、ほらお前らも僕らと一緒に楽しめや”という、そういう自分達の作った好きな
     ものを世の中に出して評価されたい。」
 
  *自分が欲しい物しか作らない、そのかわりマニアとして品質に渾身のこだわりを貫く…、
   「何のためにこういうことをやっているかというと、自分の好きな製品を出すために僕ら
     仕事しているわけなので、普通に商売でお金を儲けてゴハンを食べるだけやったら何でも
     他の効率の良い仕事をすればいいわけですから、まずはとことんやりたいことを、言うたら
     精密に精密に、ディテールをやってやってやってやって、それでええんか、それでええんか
     とひたすら言い続けるというか、それを見て感動させたい。」

  *“好き”にかけて誰にも負けない…、
   「好きなことを仕事にしてしまうと、それはそれで、そういう戦いを始めてしまった以上は
     そこに甘えることもできないですよね。その程度のことで、お前“好き”と言うとったら
     あかんやろという、そういう意識はすごく強いと思います。」

  *オタクとしての宿命…、
   「言うたら、大事にせなあかん社会性よりも、社会性を捨ててこっちの世界にのめり込めるか
     どこまでこの模型というダメな世界にのめり込めるかということですよね。オタクというのは
     そうやってどんどん追求して、細く深くどんどん狭まったところに入り込んで入り込んで
     追求する、研究者、探求者でなければいけないというのは、まあオタク資質を持ってしまった
     者の宿命ですよね。」
 
  *最後にプロフェッショナルとは…、
   「その世界において替えがきかない人間。それは高い才能を持ったり、素晴らしい製作能力を
     持ったり、情熱を持ったり、そしてひたすら自分に対して問題意識を持って前へ進み続ける
     ことができる、そういう人間だと思います。」

 はあ一、番組で紹介された価値のある宮脇氏の言葉をほぼ原文通りにご紹介しました。
 ここまでけれん味なくされますと、オタクは実にかっこいい、と思うのは私だけでしょうか。
 マニアが遊ぶための道具であること、門外漢には理解不能な深いこだわりが欠かせないこと、
 どこまでやっても終わりがないこと…。宮脇氏のいる世界と私が住む釣りの世界はほとんど
 相通じる感性で貫かれているんだ、ということを噛み締めました。要はどちらもサブカル的な
 ところがいいのかな、そして私もこれを読んでいる皆さんもオタク資質を持ってしまった者の
 宿命として釣りを研究探求するからいいんだよね、きっと。

 私自身、釣り好きが高じてワームメーカーになってしまった、そんな職業人としてこのような
 意識や考え方を少しでも色濃く持って仕事に取り組みたい、そう考えています。

 
 次回は7月26日アップします。