林 圭一のFLIP MY MESSAGE Vol.315

釣り番組を観た。

先日、私は久しぶりに釣り番組を観ました。その日の夕方、たまたまつけたテレビから

懐かしい声が私の耳に飛び込んできたからです。

出演していたのは田辺哲男氏。場所は神奈川県の丹沢湖で2日間田辺さんなりのゲームを試みる

という内容でした。

               言わずと知れた田辺哲男氏。

田辺さんとは、今から30年余り前、B.A.S.S. OF JAPANで出会いました。ふたりとも偶然同じ
クラブに所属し、共にプラクティスをしたり、卜一ナメントで競い合った仲でした。その後
活動の場をJB(当時はJBTA)に移し、ライバルであり、良き友人といった関係は10年余り続いたと
記憶しています。氏の釣りスタイルは私のそれとは大きく異なっていました。よって私から
すると“何やら訳の分からん釣りをする、だけどしぶとく良く釣ってくる人”といった風情で
私にはまず真似のできない不思議な釣りニュアンスの持ち主といった見方をしていました。
当時は良く行動を共にし、「あ一だこ一だ。」と延々釣り談義に花を咲かせたのも良い思い出です。
その頃、“フリッピンを日本に持ち込んだ人”として知られていた私に対し、「ケイちゃんは何だ
かんだ言ってディープウォーターフィッシャーマンだよね。」と喝破した氏の言葉は、今だに
忘れることができません。
 
さて、その番組での内容及び釣果はというと、これが見事なものでした。
1日目は台風の影響か、雨ザー風ビューの中、バズベイトでナイスキーパーのパターンを確立、
2日目は一転無風快晴の中、1/2ozジグ&エスケープツインで2匹の50cmオーバーを含む数匹を
キャッチしたのですから、「さすがです。」としか言いようのない立派な内容であります。
 
もちろんこうした内容に感心しきりの私ではあったのですが、それ以上に「凄いな。」と感じ入る
ものがありました。それは、淀みのない釣りを淡々と続け、当たり前のことを当たり前に決めて
いく、田辺さんならではの独特な釣りの流れとでも言えば良いのでしょうか。
キャストにしても彼は一切力まず、ヒョイと投げます。失礼を承知で申し上げれば、決して
派手ではなく華麗といった感じもありません。しかしその1投1投がピシッピシッと必要な
場所に入っていきます。ムリ、ムラ、ムダの無い、本当にやり込んだ者だけが入れる領域、
そういった特別なスタイルを感じることができました。
 
前述した通り、今回の番組で彼は2匹の50cmオーバーを釣りました。フットボールジグに
ベローンとでかいトレーラーの組み合わせ。ジグとトレーラーの色もイマイチ合ってない…。
「うわ一、関東のリザーバーであれ出すか…。全然釣れる気しね一し。でもそれで釣っちゃう
わけだよね、事実として。イイ味出してんね一、田辺スタイル。」
 
釣りに限らず、あらゆる芸事(持てる技術を駆使し、何かをやり遂げることの総称)には様々な
スタイルがあります。そして分野を問わず優秀なプレーヤーには各々に独自のスタイルが
備わっているものだと思います。今回久々に、そして改めて田辺さんの釣りに触れ、そういった
独自スタイルの匂いに何やら妙に嬉しい気持ちを味わいました。
お互いバス釣りを生業にして30年余り、その方向性やディテールは違っても、その姿は大いに
刺激になるものです。
 
「自分の釣りや仕事も田辺さんの釣りと同じく円熟味のあるスタイリッシュなものに
 したいものだ。」
偶然目にした釣り番組から、そんなことを考えた私でした。
 

次回は10月3日更新いたします。