林 圭一のFLIP MY MESSAGE Vol.356

私が見たハンドポアードワームの世界。その3

先週は今から30年程前、アメリカはカリフォルニア州で私が見聞したハンドポアードワームの世界についてご紹介いたしました。まずは、その内容について簡単に再確認してみましょう。

 

ハンドボアーは製造設備が小規模かつ単純、また作り方も簡単なため、誰にとっても開業のハードルは低い。よって小規模なブランドが数多く乱立していた。

 

その多くは、同じ形のワームを同じような色で製造していた。その独創性や開発力に劣ることに私も失望を禁じ得なかった。

 

そのような中、少しでも作りが丁寧で高品質のブランドを探し求めたが、品質の高い製品を作っているブランドに限って弱小の個人がやっているという傾向もあり、製品が良いと規模の面でビジネスにならず、規模があると作りが雑で製品としてイマイチ、となかなかに悩ましいものがあり、ビジネスとしてのブランド選びは難航した。

 

といったところでしょうか、先週の内容としては。

さて、それでは今週もハンドポアードワームについての話を進めてまいりましょう。

 

このように悩ましい状況の中、私は2つのハンドポアーブランドと取引の約束を交わし日本へ戻りました。2社とも規模、品質共にそこそこという感じ。まあ、とりあえずハンドポアードワームというものを日本において先駆けて紹介することを優先したわけです。2社と契約を交わしたのはどちらか1社だけだと生産能力に一抹の不安を覚えたからでした。

 

「へえ一、面白いねえ。」ハンドポアードワームを初めて目の当たりにした当時の釣具店の方々はおおむね皆興味を示し、まずは順調な販売開始となりました。しかし1年が過ぎ2年目に入るころからその売れ行きにも陰りが見えてきました。理由は単純明快。ただのハンドポアードワームは目新しさこそあったものの、日本において多くの釣果を生み出すことができなかったのです。「やはりダメか…。」その当時、当然のことながらこれらハンドポアードワームを自分の釣りにも取り入れていた私にも意外に釣れないのねという実感が湧いてきており、全面的に見直しを迫られる状況になっていました。

 

 

そのような中、カリフォルニアのハンドポアー市場を観察し続けていた私は、この市場が少しずつ変化しているように感じていました。当初シナモンブルーネオンやスモークブルーネオンに代表されるネオンカラーが主流であったのですが、グリーンウィニーと呼ばれるウォーターメロンとブラウンのコンボが登場し人気を博したころからその変化は鮮明になってきたように思います。まあ、わかりやすく言うならば、ネオンカラーをメインとした第1世代ブランドを尻目にグリーンウィニーを中心に多岐に渡る色を生産する第2世代ブランドが登場してきた、ということになるのでしょう。
1世代ブランドを先駆けて日本に紹介し、しかしそれによって大きな成功を得ることができなかった私にとって、第2世代ブランドは注目に値する存在であり、当然のことながらカリフォルニアのあちこちを見てまわったものです。こうして調べていくうちに、ついに私は決定的とも言える第2世代ブランドに巡り会うことができました。カリフォルニアワーム(California Worms)という名のそのブランドは、私が見る限り以下の点において明らかにそれまでの第1世代ハンドポアードワームとは違っていたのです。
 
シェイプが違う。
カリフォルニアワームもご他聞に漏れず他社と同じストレートワームやミニシェイカーも作っていたが、それ以外にシャークと呼ばれるシェイプやパドルテールグラブといった独自性の高いシェイプも作っていた。
カラーが違う。
カラーの作り方というか、ラミネートさせる色の組み合わせ方がとても斬新で釣れそうに見えた。
テクスチャーが違う。
素材であるプラスチックの手触りというか風合いが違うように感じた。具体的に言うとより弾力と浮力に富んでいるように思えた。
 
これらの違いから、私がそれまで抱いていたハンドポアードワームに対するイメージは大きく刷新されることとなりました。第1世代を見ていたころは、クリアーなディープウォーターをスプリットショットリグやテキサスリグのシェイキング(当時はドゥードゥリングと言った)渋く釣るためのスモールワーム」という感覚が先行していましたが、第2世代特にカリフォルニアワームに関しては、「浅く濁った水域でのカバーフィッシングにも良さそう」という感触を強くしたと言っていいでしょう。
 
 
売買契約締結後、日本へ輸入されたカリフォルニアワームは、当初の期待を上回る勢いでその釣果を伸ばしていきました。特に霞ケ浦水系での効果は素晴らしく、パドルテールグラブ3.5”4”本当に多くの釣り人に豊かな釣果をもたらしたものです。いやいやいや、そういう私も釣りましたよ、カリフォルニアパドルでは。1/8ozのテキサスリグをオダの中に入れ、プルン、チュルッと枝をクリアーしつつズル引いていると、コンッ!!と吸い込むようなアタリが…。今もその頃の記憶、感触はこの手のひらに鮮やかに残っている次第です。
 
カリフォルニアワームは、多くの釣り人にとって欠くことのできないアイテムとなりました。しかし残念なことに、こうした状況は1990年代中盤になると陰りを見せ始めます。ズームやバークレイが製造するホッグ系ワームが台頭、カリフォルニアワームは一気にその波に飲み込まれてしまったのです。
このような歴史を見ても、やはり10年を越えてなお愛される、本当に釣れるワームを作るにはマシーンインジェクションという製法が不可欠だと考えざるを得ません。ホッグのような複雑な形、機敏に動くヒゲやウデの成型もハンドポアーでは不可能だからです。マシーンインジェクションでワームを製造しているケイテックとしても、この辺を肝に命じ、せいぜい繊細な開発と緻密な製造技術に磨きをかけなくてはなりません。
 
日本市場では、ほぼ全面的に淘汰されてしまった感のあるハンドボアードワーム。しかしカリフォルニアワームだけは不滅の名作として私の中に強く残っています。今になってなお、その色作りには良いものがあったと思いますし、今現在新たな色を考える際にも参考にしたりしています。
 
今回は取り留めもなく、ハンドポアーの記憶を語ってみました。若い皆さんにはいまいちピンとこなかったかもしれませんね。現在は優れた国産ワームメーカーが台頭し、それぞれの流儀で製品開発をする時代。しかしそんな時代を迎える前に色々な歴史や流れがあったことを知っておくのも悪くないことかもしれません。
 

次回は7月31日更新いたします。