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林 圭一のFLIP MY MESSAGE Vol.169

生分解ワームに取り組んだ日々 その1

現在私は、ルアーマガジンに「温故知新」というタイトルでコラムの連載を続けています。ごく最近、私はこの連載の中で、過去に経験した生分解ワームの開発について触れました。前編・後編の2部からなるこの原稿は、私としてまずまず上手くまとめられたものとなりました。当コラムをご覧の皆さんにも、ぜひその内容を知っていただきたく、ルアマガに掲載された原稿を当コラムにもそのまま転載しようと思います。

すでにルアマガで読まれた方もおいでになるかもしれませんが、その点はご容赦ください。


 

ご存じない方も多いと思いますが、私は過去に生分解ワームを作るべく懸命に取り組んだ 経験を持っています。今週はこの辺のところを回想し、ケイテックのモノづくりに関する歴史の一端をご紹介しようと思います。

話を始める前に、まず生分解とは何かについて簡単に説明しておきましょう。

 

【生分解とは何か。】

生分解とは、プラスチックが自然界にいる微生物の働きにより分解され、最後は二酸化炭素に変化してしまうことを言います。つまり、この技術をワームに応用すると根がかり等で湖底に放置されたワームは、水中の微生物によって分解され、水と二酸化炭素といった元来自然界にある物質になるわけで、釣り場の環境に与える影響を軽減することができる、という寸法です。

それでは、プラスチックならどれでも生分解するのでしょうか?答えはNo、ほとんどのプラスチックは分解されることはありません。特に私達の文明的な生活を支える主たるプラスチックは、まず分解しないと思っていい。そりゃそうでしょう、家電製品や玩具、果ては自動車に至るまで、プラスチックを使った製品が時とともに分解され壊れてしまってはシャレにもなりません。このようなことから、一般のプラスチックは、いかに分解、劣化等が起こりにくく、長い耐用年数を誇るか、を基準に開発されてきたのです。
このようなことから言っても生分解されるプラスチックがいかにマイナーな存在か、想像に難くないでしょう。ましてやワームになり得るほどの超軟質生分解性プラスチックともなると、本当に珍しい材料と言うことができます。

さて、私がこのような珍しい、そしてだからこそ製法のひな型すら判然としないこの分野に乗り出そうと思ったのにはワケがありました。それは、日本最大のトーナメント団体、「JB」の会長をしておられる山下茂氏(以下山下会長)とのある日の会話にありました。確か2002年のことだったと記憶しています。

そこで山下会長は…、
これからはバス釣りの世界でも環境保護を全面に出していくべきだと思う。
よって今後はJBでも生分解ワームを筆頭に環境対応品を中心に据えたトーナメント運営を推進していきたい。
というような要旨のことを言われたのです。
私はこれを聞いて、素直に「正しい」と思いました。この当時、多少はワーム作りができた
私は、「どうせ作り方を研究するなら、自分が正しいと思える方向性でやってみよう。」と強く思ったのを覚えています。

こうした経験、思いを背景に私は生分解ワームの独自開発を決意しました。その当時、何かのテレビで観た職人の言葉、「できるまでやめなきゃ、必ずできる。」を合言葉にしてとことんやってみることにしたのです。

と、かっこ良さげに言ってはみたものの、その開発、ましてやきちんとした製品を生み出すまでの過程は決してゆるくはありませんでした。ありていに申し上げれば、ケイテック始めて以来、あんなに試作し、観察し、考え抜いたことはなかったと思います。このような研究生活が1年余り続いたでしょうか、様々な紆余曲折を経てその成果は徐々に製品レベルへと近づいていきました。そして2004年春より、私は自分の全精力を注ぎ込んだ生分解ワーム“BIO-MIX
”シリーズの発売に漕ぎつけたのでした。
その当時の私は、期待に胸を膨らませ半ば有頂天になっていました。そりゃ無理もありません。長きに渡る研究開発の果てに新製品を発売できたのですから。それも「エコ」という決定的なキーワードを携えてのデビューなのです。「我が社の未来は明るい。」そう思わなかったと言ったらウソになります。
しかし、これから起こる現実は、私の思いとはまったく違っていました。そう、手塩にかけて開発したはずの“BIO-MIX”シリーズは、発売後2年で失速、廃盤に追い込まれていったのです。いったい何が悪かったのか…。その分析は次回にて考えてみます。
 
 

   次回は9月2日アップいたします。

株式会社ケイテック

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