イカす話 その1
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、ケイテックのワームには本物のイカの成分がゴッテリ入っています。よって何とも言えない生臭さ、というか独特のイカ臭さがワームに付いており、なかなかに強烈であります。この匂い、釣果を上げ、好きになった釣り人から見れば、「この匂いでメシ2杯食えますから、オレ。」みたいな香しいもののようですが、工場の中で働く人達から見れば、衣服や髪の毛にまで付着し、方々のご家族には極めて不評なようです。
今回は、そんな“イカフレーバー”と巡り会い、それを採用し自信を深めていくまでの顛末をご紹介してまいります。なお、その原稿、表現の多くは、以前私が執筆したルアマガの連載から引用させていただきます。
今の世の中、実に多種多様な製品で溢れています。そしてその中には、メーカーが謳うような効果・効用の有無が判然としないものも多いようです。例えば、風呂に入れる入浴剤。メーカーは、「香りや泡で疲れが取れる。」と言います。しかし、その効果は人それぞれ。「確かな効果を感じる。」という人もいれば、「よ一分からん。」という人もいる。ああ、判然としない。言い方を変えれば、「信じる者は救われる。」という世界でもあります。
さて、それではワームの匂いについて。これとて人によっては効果が判然としないもののひとつでしょう。かく言う私も数年前までは、「匂い?そりゃ入浴剤や精力剤の類いだろ?」くらいに考えていました。「ルアーなんだから動きで勝負!!匂いもへったくれもなく動き一発で食わせるくらいの執念持ってズル引くのじゃ。」といったスポ根的な考えで釣りをしていたのです。若かった…。
ワームの匂い=効果が判然としないもの。
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つまり誰の目にも明かな真実とは言えない。
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時には怪しい場合もあるかも…。
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よって盲目的に信じるのはやめよう。
これが私の長年に渡る匂いに対する考え方。
そもそも釣りというのは、こうした判然としない、ややもすると眉ツバものの話を寄せ集めたような遊びであります。春はボワッとした膨張色のワームが釣れるとか、ラトル音はあった方がイイとか悪いとか、湖流の絡みであそこに魚が湧いて出るとか、この手の話をし出したら枚挙にいとまはありません。このような“怪しい話”を自分の経験と照らし合わせ、「これは信じるけど、あれはチョットね…。」といったように選別していくのも釣りの楽しさでありましょう。
さて、そんなこんなでワームの匂いには懐疑的だった私。しかしそんな私にもやがて転機が訪れようとしていました。それはあの匂い付きワームのビッグブランド、“バークレイ”の台頭に端を発します。いつ頃からか定かではありませんが、バークレイのワームが評判を呼び、「あの匂いは釣れる。」ということになっていたのです。
「多くの民は匂いを信じておるな。これは私も認識を変え、効果的な匂いを開発せねば…。」
こうして私の意識の中には、“匂いの開発”という件が強く刷り込まれていきました。
「ワームに匂いを付けたい。それも世の東西を問わず、誰もがその効果を認めざるおえない、そんな本物の匂いを探し当てるのだ。」
ややもすると、漠然とし、どこから手を付けたものか分からない、そんなテーマであっても私は考え続けていました。
「とにもかくにもワームに匂いを付けるのは簡単だ。世の中にはあらゆる種類の香料というものがあって、それを加えればいい。しかし、確実に効果が認められ、確信を持って人に勧められる匂いとなると、話は違ってくる。効果が判然としないことが多い分野だけに、これぞというものを探し出し見極めるのは決して簡単ではない。」
このような思いの中、私はある方針を定め探索していきました。そしてついに「どうやらイカがイイらしい。」という有力情報をゲットするに至る顛末は来週お届けいたします。
次回は7月31日アップします。