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林 圭一のFLIP MY MESSAGE Vol.234

イミテーションについて考える。(後編)

先週は、バスを含んだ多くの肉食魚の摂餌行動は、"思慮深さ"よりも"俊敏さ"の方が優先される場合がほとんどである、ということを申し上げました。このことは取りもなおさず、彼等が餌を発見した際、安全を担保することよりも、取り逃がさないようにすることに重点を置いているためだと思われます。それだけ野生の中で生き抜いていくことは大変なことであり、彼等は常に餓死に代表される命にかかわるリスクを背負って生きているのでしょう。さて、こうした習性を持つ魚達をルアー、フライといった疑似餌で効果的に釣る場合、それらの疑似餌にはどういったキャラが必要なのでしょう。

ということで、イミテーションについてさらなる考察を進めてみます。

 

しつこいようだが、肉食魚の摂餌行動を再確認する。

これに関しては、何度も申し上げているように"思慮深さ"よりも"俊敏さ"の方が優先される場合がほとんどです。つまり、魚は疑似餌をじ一っと凝視することは稀で、ほとんどの場合、コンマ何秒という一瞬の判断でその餌を食うか食わないか決めているのだと思われます。これは私の勝手な感覚なのですが、目を閉じた状態から一瞬だけパチッと目を開け、また閉じる、こうした動作をした時に見えるフラッシュのような画像、視覚で食える/食えないといった餌の評価、判断をしているイメージです。

もしなんでしたら、ご自身でも試してみてください。

 

一瞬の俊敏さの中で"食える何か"を魚にイメージさせる疑似餌とは

ルアーであれ、フライであれ、以下の条件を備えていることが肝要だと思います。これからご紹介するファクターはフライフィッシングの世界ではよく言われていることも含まれています。そして、それらはフライフィッシングの世界のみならず、バス釣りの世界でも通用すると、私こと林は長一いバス釣り歴の果てに感じるのでございます。では、そうしたファクターを順を追ってご紹介いたします。

 

 

長さ×太さ、色といった"規格"がその魚のメインベイトとおおむね似通っていること。
フライフィッシングで言うところのマッチ・ザ・ハッチ。バス釣りにおいてこの類いのことは、通常フライフィッシングほど厳格ではない場合が多いのですが、それでもプレッシャー等でバスがナーバスになるほど摂餌行動がセレクティブになり、必要とされる考え方です。
 
ルアーの輪郭がファジーなこと。
バスを含む多くの肉食魚は、輪郭がファジーな(あいまいな)ものに対し”食べられそうな何か"を感じるようです。例えば、動かし方次第でそのシェイプがいかようにでも変化するラバージグ、フラッシュはするけれども、その正体はイマイチつかめないスピーナーベイトのブレード、繊細なリングボディのワームやチューブベイトの脚等が「存在はあるんだけど何かあいまい」なルアーの代表格と言えるでしょう。
これまで力を入れ開発製造してきたラミネート2色成型や今後の新製品に採用するコアショット2色成型等も色で輪郭をぼかす効果があると思います。特にコアショット2色成型では、こうした輪郭をぼかす効果を強く念頭に入れ、カラーを決めていくつもりでいます。お楽しみに。
 
デザインがデフォルメされていること。
これはワームの場合でありますが、過度に意匠にこだわらず、比較的シンプルにデフォルメされていることが大切かと思います。またデザインはワームがより水に馴染み、水中での動きが本物の餌をイメージさせるようなものでなければなりません。多くの場合、過度な意匠は水中での生命感というか、生き物らしさを阻害します。ワームを開発する立場の人間から言わせてもらうと、このシンプルながらにして新しく、本質をついているものを開発するのが一番難しく、苦労する点ではあります。
 
このように魚をより引き付け、口を使わせるイミテーションとは、魚のメインベイトに合わせながらもシンプルにデフォルメされ、ファジーな風合いを持ったものと言えるでしょう。ジーっと凝視した際のリアルさよりもパッと一瞬で見た際のイメージが大事、これが真実なのです。

 次回は12月21日アップします。

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