雑誌広告の思い出。(後編)
1996年春、私のケイテック設立準備は佳境に入っていました。設立後は速やかに雑誌に宣伝を打ち、会社の存在を世の中にアナウンスしなければなりません。前回のコラムで申し上げた通り、私はこうした雑誌宣伝の製作も自分でやろうと決めていました。人に頼んで作ってもらうよりケイテックのことを最も熟知し執着している私が知恵を出して作ってしまったほうが良いものができるのでは、と思ったからです。
「いかにも釣り具然とした、ゴチャゴチャした宣伝はやめよう。自分の好みではないし、何より他社との差別化がはかれない。」
当時、空前のバス釣りブームが巻き起こり、Basserを初めとした各誌はその誌面の半分が各社の宣伝という有り様。そんな中、他社とは違う宣伝スタイルを模索するため、私は自分なりに研究を進めていました。
「釣り具よりもっとメジャーな業界の宣伝を見てみよう。きっと製作費をかけ、優れたデザイナーやコピーライターが意匠をこらしてやっているに違いない。」
そう考えた私は、様々な業界にかかわる雑誌や書籍をチェックしていきました。アパレル、ホテル、自動車、たばこ、各種スポーツ用品等々…。こうして様々な分野の広告宣伝を見て行くうちに、ひと際私の目を引く製品宣伝群がありました。化粧品です。それも比較的高級な化粧品(資生堂"クレ・ド・ボー"やCLlNlQUE)の宣伝はすごい出来映え。決してその製品の持つ機能を論理的かつダイレクトには言わない。
しかし、読む者に「これをお使いになれば美しくなれますよ。」とささやきかける言葉の巧みさ。製品の品質 の高さを強くイメージさせる透明感。いや一、コピーと言い、写真のグレードと言い、端正なレイアウトと言い考え抜かれたプロの技満載って感じ。言葉少なに語りかけ、だからこそ強烈な印象を残す、これぞケイテックが取るべき路線と私は感じました。ちなみに同じ化粧品でも若い人向けの比較的安価な製品の宣伝では、安い製品ほど具体的機能を謳う傾向があります。面白いものです。興味のある方は書店で女性誌見てください。アブナイ人と思われない程度にさりげなく。