マニュアルに関する考察 その2。
先週よりマニュアルといったものを通し、仕事とのかかわり方について考えていますが
ここでトヨタ自動車で古くから継承されている考え方をご紹介したいと思います。
「人間性の尊重」とも呼ばれる基本理念は、企業(職場)が人を用いることへの配慮に満ちており
私は大いに共感いたします。
この基本理念は、「人間の知恵は無限である。」という考え方に端を発しています。つまり
人は日々経験を積み、考え続けることで無限とも思える程に色々なアイデアや工夫を考える
ことができる。まったくもって人間の知恵やその可能性には際限がない。ということを
言っているのだと私は理解しています。
「人間のやったことは、人間がまだやれることの1/100に過ぎない。」
トヨタ創業者とも言える豊田佐吉氏(故人)のこの言葉でもわかる通り、トヨタには働く人々の
可能性に終わりはないということを信じる文化があるようで、私のような昭和的気風を持つ
人間には心地のよい響きがあります。
「人間の知恵は無限である。」「人間の考える力を信じる。」このような感覚を原点として
トヨタは社員に精一杯考え尽くすことを求めます。
「その人にとってはたった一度きりの掛け替えのない人生。その多くの時間を借り受けて
働いてもらうからには有意義に働いてもらいたい。もし無駄な働きをさせるのであれば、
それはその人の人生そのものを冒涜することにもつながるのではないか。よってトヨタでは
有意義な仕事、ひいては有意義な人生を社員に送ってもらうためにも、ひとりひとりの
考える力を信じ、これを尊重する。こうした"考える力"は人間にのみ与えられた能力であり
人間らしさ、すなわち人間性の根幹を成すものである。」
以上が私なりに理解している「人間性の尊重」という考え方です。
先にも申し述べました通り、私はこうした考え方に大いに共感を覚えます。読者の中には
これを"奇麗事"と受け取る向きもあるかもしれません。なるほど、どんな考えであれ、決して
鵜呑みにせず、自分の考えで評価する、これも一種"人間性"なのかもしれません。お互い自分の
仕事に照らし、これまでの経験をもって深く考えてみることは良いことだと思います。
さて、大いに共感を覚える私としては、自分の会社でもこのような考え方が浸透し、前向きに
理解されることを願って止みません。そして何であれ、仕事の仕方の裏に隠された本当の理由に
こだわって欲しいと思います。なぜそういう仕方でやるのかという、仕事の芯の部分が見えさえ
すれば、マニュアルに頼るだけではなく、それぞれの考えやその人ならではの味付けで仕事を
より豊かなものに変えていくことができるからです。
先週も申し上げたことですが、どうやら私はマニュアルの必要性は理解しつつも、マニュアルで
仕事をしたくないし、させたくもないといった考えのようです。とにかくマニュアルに沿って
やってくれ、といった職場の空気はやはり好きになれないのです。
マニュアルに沿って仕事をしていた人達も、いつの間にかそのマニュアルを見直し、改善して
いける、そんな自主性に富み人間性が尊重される職場をいつの日にか作りたいものです。
「動きを働きに変えろ。」これもトヨタで言い続けられている言葉だそうです。
"言われたから、あるいはマニュアルだからそうしている"は単なる「動き」に過ぎない。
その「動き」ににんべんを付けて、つまりその人としての知恵や考えを加えて初めて有意義な
「働き」となるのだ、といったことを言っています。
「人間性の尊重」、皆さんはこのような考え方をどう思われますか?
たまにはこんな視点から仕事を考えてみるのも悪くないのかもしれません。
次回は2月7日アップいたします。