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林 圭一のFLIP MY MESSAGE Vol.288

カタログ今昔物語

過日、大阪ではフィッシングショーが開催されました。そんなこともあって私の手元には何冊かのカタログが届いています。どれも上質でとても立派。これらをパラパラ見ていると、あるひとつの文章が私の目に飛び込んできました。それは株式会社デュオのカタログ。日本を代表するプラグメーカーのひとつであるこの会社は、そのカタログの中で企業としての主義主張を謳っています。

ではその主張とは。私なりに要約し、その内容を以下にご紹介いたします。


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表題:日本でしか作れないものがある。

 

・現在、多くのルアー(釣り具)が中国、東南アジアを中心とした海外で生産されています。

 

・思えば1990年代、釣り具業界は空前の好景気、何でも売れた時代」でした。

 

・ところが2000年代、この好景気は暗転。生産拠点を持たないメーカーを中心に激しい

 価格競争が勃発。安価な製品を求め多くの委託生産が海外に流出しました。

 

・ただ我々(DUO)はこうした流れに大きな疑問を持っていました。

 

・もはや「何でも売れる時代」ではない。その中で残っていくためには、競争力のある良いモノを

 作ることが肝心です。そして本当に良いモノは、日本国伝統のイデオロギー(筆者注:おそらく

 日本人が元来持つ勤勉さや誠実さといった美徳や、そのような優れた気質が紡ぎ出す端正な

 ものづくりを指した表現なのだろうと私は理解しています。)から生まれるものなのです。

 

・よってDUOは、必然として日本国でしか作れないものを作り続けます。


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「ほほ一、そういうこと言うか、カタログという場で。」
私は上記の内容を読んで思わずこう陰りました。
 
今私がこの原稿を書いているのは、このカタログに掲載された文章、DUOという会社が持つ考え方に口を挟むためではありません。具体的な表現方法はともあれ、むしろ私はこの手の考え方に対し少なからず共感を覚えてしまうと言っていいでしょう。先日の当コラム(Vol.286)でも申し上げた通り、私も日本のものづくりを体現した本物の"ジャパンブランド"と言われてみたいのです。
 
さて話題は変わり、今から30ウン年前、私が高校生だったころの話をさせてください。
当時、私は当然のことながらまだ高校生で、さしたる釣り具を持っているわけでもなく、人に語れるような釣りの経験を積んだわけでもない、いわゆる普通の高校生でした。ただ、なぜか「大学生になったら思い切りブラックバス釣りをやるんだ、ボクは。」と硬く決意だけはしていてこの点においては少し変な高校生だったのかもしれません。この時代はまだ高校生がアルバイトできるような世の中ではなく、資金面においても、また高校生としての本分に照らしてもちゃんとした釣り人としてのキャリアはもう少し大人になってからね、という雰囲気の中で暮らしていたのです。
 
「早くブラックバスを釣ってみたい…。」
そんな切なさを紛らわす行為のひとつとして、私は当時晴海で開催されていたフィッシングショーに出掛けました。最大の目的はもちろんカタログを手に入れること。こうしていそいそ集めたカタログ達は、当時の私を未知の世界へと次々に案内してくれました。特にルアー&フライを専業とする元祖ハイカラ系とも言えるティムコ、スミスのカタログは、まあ擦り切れるまで見ましたよ。今ほど立派ではない、ペラペラなものでしたが、私にとってはキラキラ眩しいほどの世界だったのです。本当に素朴に、フェンウィックという竿がありますとか、フェラライトフェルール(今では常識とも言える逆並継ぎデザイン)は竿のアクションを損なわず素晴らしいとか、ただそれだけのことが言いようもないほど新しい、そういった若々しい感覚にワクワクしたものです。
 
さて話は戻って2014DUOカタログ。
「ほ一、そういうこと言うか、自社のカタログで。」と私が思わず喩ったのは、時の経過というか時代の移り変わりをこのカタログに感じたからです。もはやカタログは瑞々しければいい、というだけのものではなく、業界の内部事情を多少なりともお客に明かしてまでも自社の主張や理想を語る場になったようです。
 
ケイテックでは、カタログを作ったり、それをフィッシングショーで配布したりという計画はもともと持っていませんでしたし、これからも持たないでしょう。この件に関しては、「そこまで立派な会社じゃないよ。」のひと言で済ましているのです。しかし、そんな私達でも未来に向けて理想のひとつも持っていたいものだと思います。より明るく鮮明なビジョンを常に携え自らの夢をきちんと語れる、そんな会社になりたいものだ、各社のカタログを見終え、このようなことを考えています。

次回は2月28日更新いたします。

 

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