年頭にあたって。
新年明けましておめでとうございます。
今年も当コラムをご愛読いただきますようお願い申し上げます。
皆さんお正月はゆっくりできましたか?私は例年通り日本人らしい、つきなみな正月休暇をいただきました。まあ、言うなればコタツ、ミカン、テレビのようなものでしょうか。こうなりますと特段“正月はこうだった”と皆さんにご報告するネタもございません。
さて、そのような中、今年1回目のコラムは何書こう?と考えますと、どうしても“新年にふさわしい何か“を、という欲にかられてしまいます。極めて標準的で話題性もない正月を送ってしまった私にとって、こうした欲は誠に具合の悪いもので、「ああ、困った。」とばかりに完全なるネタ切れ状態、本日まで原稿を書けずにおりました。
そうこうしていた1月7日のこと、昼食をとりながら目にした新聞のとある記事に私の目は釘付けになりました。
「トヨタ自動車、“ミライ”特許を競合他社に無償提供」という見出しのその記事は、
1.トヨタは水素で走る燃料電池車(FVC)“ミライ”を世界に先駆けて日本で発売した。
2.トヨタではその開発過程で取得した約5680件の特許を競合自動車メーカーやエネルギー会社に無償で提供する考えを発表した。
3.競合自動車メーカーやエネルギー会社に関連特許を無償提供することにより参入を促し、普及への流れを加速させる考えである。
4.これはトヨタによれば、「FVC導入初期段階においては普及を優先し、開発、市場導入を進める自動車メーカーや水素ステーション整備を進めるエネルギー会社などと協調した取り組みが重要であるとの考え」に基づくものである。
「うぉ一、5000件を優に上回る特許を取得する、そのために費やされた費用、時間、知恵、汗の量たるや半端ないことくらいオレにでも分かる。それを本来の競争とはいったん切り離し、まずは普及を優先させるための決断を行うとは。トヨタが強いからこそ下せる決断なのだろうし、こうだからトヨタは強いとも言える。」
私は、このトヨタの強さにただ感心し、水素社会の実現に貢献したいというトヨタの強い想いに感動すら覚えました。
一、上下一致、至誠業務に服し、産業報国の実を挙ぐべし
一、研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし
こうした豊田綱領(豊田佐吉の考え方を成文化したもの。トヨタグループ各社に受け継がれ、全従業員の行動指針とされている。)に盛り込まれた言葉通り、ひたむきに研究開発し、時代をリードしながらその活動を通して社会や国に報いる様たるやまさに有言実行の最たるもの。私は素直に「かっこいい。」とあこがれてしまいます。
それは見方によっては、“敵に塩を送ってまで自社の車を売りさばこうというしたたかな戦略”とも取れなくはないのですが、やはり私は、「トヨタは本気で水素社会の実現を目指し、人類への貢献を考えている。そしてそうした“大義”の上に立ち、しっかりビジネスをすることで社会との調和を保っているのだ。」と考えたいタイプの人間なのです。
このニュースを読んで、私は小さいなりに自分が営む“ケイテック”という事業のことを考えずにはおれません。
「大義とまでは言わないまでも、それなりの目的や存在意義がなくてはならない。」
「数字(売上や利益)はあくまで目標であって、これが目的になってはならない。」
といった事柄が頭の中を駆けめぐります。
まあ、この手の話はそう一朝一夕に答えが出るものでもありません。おそらくコツコツと地道に物事を積み上げる努力の中から、自然に育まれていくものなのでしょう。
何であれ、私はケイテックが明確で正当なビジョンを持ち、そのビジョンをかなえるために価値あるビジネスをする、そんな会社になってほしいと願っています。年頭にあたり、今感じていることを申し上げてみました。
次回は1月16日アップいたします。