私が見たハンドポアードワームの世界。その1
先週は、私が新たなストレートワームの開発を始めたこと、そしてそうした話題に付随してハンドポアー(Hand Pour;手流し)のワームに関する事柄をご紹介しました。
ハンドポアードワーム(Hand Poured Worm;手流しされたワーム)自体は、日米を問わず今でこそだいぶ下火になっているようですが、今から20年以上前にはアメリカ西海岸を中心に結構な隆盛を極めていたのです。ただ、なにぶん四半世紀も前の話につき、ハンドポアードワームそのものが今の若い人達にはピンと来ない場合もあるようです。
ならばということで、当時のカリフォルニアを中心としたハンドポアー業界について私が見聞きした事実に基づきご紹介したいと思います。
まず話を始める前に、ワームを作る方法として“ハンドポアー”とはどういうものなのか、またそれとは対極の位置にあるマシーンインジェクション(射出成型)とはどういう製法なのかについて触れておきたいと思います。
・ハンドポアー製法とは
シリコンやプラスチックの簡易な型に加熱して溶けたプラスチックを上方からたらたらと 流し込むという原始的な方法。型はおおむね下半分に製品形状が施され、上半分はオープンな状態。よって下半分は製品としての形状を呈するが、上半分は平面になってしまう。つまりこの製法で断面が真円の製品を作ることは不可能で、多くの場合製品断面はカマボコ型になってしまう。また、この製法で均質な薄いテールや細いピンテールを成型することは難しく、どうしてもストレートワームやパドルテールグラブ等単純な形状に生産品目は片寄りがちである。ハンドポアー製法の長所は、何と言ってもその複雑で豊かな色作りにある。手間さえ惜しまなければ、複数(多くの場合3色)の色を積層させることが可能で、こうした色のなまめかしさは、多くの釣り人にとって大きな魅力であると言える。ハンドポアーによるワーム作りには何らかの機械等大がかりな設備は必要無く、技術、資金面に乏しい個人がごく小規模に、少ない資金で始められるという特徴がある。
・マシーンインジェクション製法とは
鉄、またはアルミで作られた金型に製品形状を彫り込み、そこに加熱して溶けたプラスチックを充填するという方法。材料の充填は成型機と呼ばれる専用の機械によって行われる。この方法により製造される製品は、総じてハンドポアーによるそれと比べ精度が高く、薄いテールや細いピンテール等微細な形状でも成型が可能である。このように製品形状をある程度凝ったものにして、そのワームに独自の機能やアクションを盛り込もうとするならば、ハンドポアーよりマシーンインジェクションに分があることは明らかであり、ロボワームを除く全てのメジャーワームブランドがマシーンインジェクション製法を採っているという事実は頷ける。ただ、複数色を積層させて凝った色を作るという点においては、マシーンイジェクションはハンドポアーに劣るといわざるを得ない。このようにマシーンインジェクションには一定以上の機械設備が必要であり、それを操る技術と設備投資のための資金が必要となることから、ハンドポアーに比べ開業へのハードルは高いと言える。