樹脂タングステン物語 その③
樹脂タングステンを用いジグヘッドを作る。このアイデアが誰の特許にもならず事実上”解禁”になったことを受けて、私は量産化への準備を急ぎました。平成15年のことです。
樹脂タンの試作自体はこれより3年前、いとも簡単に成功していたので(Vol.11 樹脂タングステン物語 その②参照)しっかりとした金型を作り材料を仕入れれば、後はパカパ力打つ(成型する)だけ、と思ってました。
まずは懸案だったラバージグモデルⅠの樹脂タン化をはかるべく、7,9,11,14gの各サイズのヘッド用金型を準備。材料比重が鉛と比べ30%ほど高くなったので、ヘッドシェイプもその分スリムになります。例えば鉛の7gヘッドシェイプが樹脂タンでは9gになる、といった具合で、シェイプと重さの関係が1段ズレることとなりました。その分当然のことながらスリ抜けは良くなり、カバー対応ラバージグとしての性能も上がるわけです。
樹脂タンの試作自体はこれより3年前、いとも簡単に成功していたので(Vol.11 樹脂タングステン物語 その②参照)しっかりとした金型を作り材料を仕入れれば、後はパカパ力打つ(成型する)だけ、と思ってました。
まずは懸案だったラバージグモデルⅠの樹脂タン化をはかるべく、7,9,11,14gの各サイズのヘッド用金型を準備。材料比重が鉛と比べ30%ほど高くなったので、ヘッドシェイプもその分スリムになります。例えば鉛の7gヘッドシェイプが樹脂タンでは9gになる、といった具合で、シェイプと重さの関係が1段ズレることとなりました。その分当然のことながらスリ抜けは良くなり、カバー対応ラバージグとしての性能も上がるわけです。
話は横道にそれますが、どんな分野でも長年消費者に支持される製品の多くは、こうしたマイナーチェンジをしていると聞きます。それは、時代の変化に対応するためのものであったり、技術の進歩に伴ってより良いものへの改良だったりと様々です。
このようなマイナーチェンジによって長年君臨し続けている製品にも色々ありますが、トヨタ自動車の「クラウン」や、日清食品の「カップヌードル」、そしてポッカコーポレーションの「ポッカコーヒー」などはとりわけ有名なものでしょう。
クラウン;
私が物心ついた時にはすでに存在していたトヨタの高級車。
私が物心ついた時にはすでに存在していたトヨタの高級車。
「いつかはクラウン」という宣伝コピーは、昭和の高度成長期を象徴するものとしてあまりにも有名。常にトヨタの最新技術を搭載。
そう言えば、ボクのオヤジもずっとクラウン乗り継いでたっけ。
カップヌードル;
味や具材を微調整し、不動のキングオブカップめん。
何だかんだいってボクもカップめん食べる時はコレです。
変にラーメンに媚びず、『オレはカップめんなんだ!』と言わんばかりのいさぎ良さがよろしい。
ポッカコーヒー;
缶にプリントされている男の顔が時代とともに変わっていったのは有名な話。昔はゴツい労働者風だったが除々に段階を追って垢抜けてきたそうな。
最近は微糖ブームで苦戦が懸念されるが缶コーヒーの代名詞であることには変わりはない。
さて、話を戻しますが、私もメーカーの端くれ。トヨタにはとうてい及ばないまでも、時代の変化や技術の進歩に合わせた製品作りを心懸けたいものです。そういった見地からもこの樹脂タン化計画は、大いに私のヤル気を刺激していました。
量産の準備もすっかり整い、私は並々ならぬヤル気で仕事に取りかかりました。
「あお一っ、ラバージグのクラウンじゃ。いつかはケイテックーっ!!」
しかし思ったようなピカピカの良品が取れません。
「アリッ??? じゃあ、これならどう?」
成型の方法を少し変えてみます。
「ゲゲーッ ダメじゃん。試作の時はウマくいったのに一っ。」
はっきり言ってナメてました。
試作で50個、100個作るのと、量産で何千何万作るのとでは必要とされる技術のレベルがまるで違ったのです。試作ではたまたま条件が揃い成功した。しかしそれは意図的に揃えた条件ではなかったので(早い話がマグレだったので)少しでも何かが狂うと対応できずガタガタになる。これが量産の現実でした。
その日より私は、とめどもなく続く試行錯誤のプロセスに突入していきました。
ある日、量産をうまく終えた夕方。ピカピカな製品を前に私は、
「フッ。見切ったぜ。(ニヒルでクールなゴルゴ13風に)」
と樹脂タン成型の奥義を悟ったかのように振る舞ったりします。
しかし翌日は不良まみれで理論総崩れ、奥義もへったくれもないのです。
このような日々を送るなか、それでも薄皮をはぐように少しずつわかってくるものです。
このへんは釣りととても似たニュアンスがあって、とにかく続けているうちに感覚が磨かれ、段々と良い結果が出せるようになるのです。
まだまだと思いながらも、一定水準の技術(ないしは感覚)を手にした私は、さらに細密なラウンドジグヘッドの生産も開始。今では定番品として多くの方にご愛用いただいています。
樹脂タングステンはジグヘッド用材料として
①鉛のような有害性がない。
②鉛より比重が高く、同じ重さならコンパクトにできる。よってスリ抜け性に長け、根掛かりが減る。
③細密な加工ができる。つまり繊細なデザインを製品化できる。
④材料硬度があるので、湖底での感度が良い。
といった優れた特徴を持っています。
何せタングステンなため材料コストはバカ高く、それが玉にキズですが、その短所を補って余りあるものだと思います。よく出来てると思いますよ、ホント。
次回予告; 次回は7月4日アップ予定。